ミトサンが気になる表現者たちの素顔に迫るパーソナルインタビュー。映像ディレクター、加藤マニさんのインタビュー後編では、その仕事スタイルをお聞きしました。
年間50本以上のミュージックビデオを制作する映像ディレクター、加藤マニ。後編のインタビューでは、キャリア初期の苦労話から最近の悩みまで、お仕事にまつわる話を中心に聞きました。
いくらだったら嬉しいですか? 映像ディレクター、加藤マニの交渉術
実家の青梅から引っ越した後は?
加藤マニ(以下、加藤)加藤マニ(以下、加藤) 当時つきあってた人と同棲してたんですよ。ブックオフ暗黒時代の貯金がそれなりにあったので、表向きはフリーランスで映像ディレクターやってますということにしてましたが、実際は仕事なんてほとんどありませんので、音楽のリハーサルスタジオで働いてました。めちゃくちゃブラックな労働環境でしたね。
バンド活動はどうだったんですか
加藤 あれだけ夢中になってたバンドも、結局クビになる始末で。
立て続けにいろいろありますね。
加藤 その方が新しく会社を起こすから、わたしに一緒に来てほしいと言
倒れなかったら仕事は続けてたんですか?
加藤 でも、たぶん辞めていたと思います。月~金で昼間働いて、夜中に撮影の仕事をして、土日も撮影が入ってたりしたので。
でも、撮影はずっと続けられたんですね。
加藤 やってました。ただ、1年くらいほとんど撮ってない時期はあります。2010年くらいなんですが、同棲してた人が出て行ってしまって。
ヘビーですね。
加藤 その時はどん底状態でしたね。ビデオを撮るのもイヤになってきてしまって。予算的な部分で同じようなことしかできなくなってきていたので、また公園で歩きながら歌うのかよ!みたいな葛藤が自分の中でありつつ。でも、2011年にデジイチ(デジタル一眼レフカメラ)を買って変わりました。「こんなにできるんだ!」って。それまで使っていたビデオカメラの画質とぜんぜん違った。
キャノンの5Dですか?
加藤 そうです。あれが登場したことで急にテンション上がって、それと同時期に、仲の良かったバンドが少しずつ売れ始めて、ビデオの予算もちょっとずつ上がっていったんですよ。
兆しが見えてきましたね。その当時、自分の中で思い出に残ってるビデオというと何ですか?
加藤 Veni Vidi Viciousの「Good Days」という曲がデジイチで最初に撮ったビデオですね。ちょうど震災の後だったんですが、それもあって印象深いです。
作品のアーカイブを見ると、2011年から急激に数が増えましたよね。
加藤 バンドを担当していた方が転職して、別のレコード会社や事務所に
ギャランティについてはどう考えていますか?
加藤 お金については若い方々からよく相談されます。
なるほど。
加藤 そうすると自分がどれくらいの価値なのかが分かるというか、自分のギャラの平均値になると思うんです。ただ、最近は技術料とか演出費のようなコストの概念が薄くなってきてる気はしますね。わたしがダンピングしているという説もなくはないです。今はもう
とにかく最後まで完成させることが大切です
マニさんが撮影現場で大事にしていることは何でしょう?
加藤 いろんなところで言ってるんですが、怒らないようにしてます。
マニさんの下で働きたいっていう映像ディレクター志望の若い子もたくさんいるんじゃないですか。問い合わせを受けることも多いですか?
加藤 よくありますよ。いま手伝ってくれる人たちは、
(笑)それは難しい問題ですね。
加藤 なんか怒った方がいいのかなって。
現場でトラブルがあっても怒らないんですか?
加藤 自分でなんとかしちゃいますね。例えば、
アハハ。
加藤 それでその子も、あっしまった。って雰囲気になったんですね。
ピースフルですね。
加藤 実際は、1人だけなかなか着火しなかった、
では、この世界を目指す若い子たちにアドバイスをお願いします。
加藤 いまは個人でも色々作れる環境が多いものの、上の人から怒られて
マニさんの下でアシスタントやってた人で、いまディレクターで活躍してる人はいるんですか?
加藤 リーガルリリーなどを撮っている大塚ユウコさん、あとメランコリック写楽やRollo and Leapsなどを撮っているアフガンRAYさんあたりはご活躍ですね。
彼らが仲良くしている次世代のバンドもいれば、一方ではマニさんが仲良くしているバンドもいる。お互いの持ち場で活躍して、もっと音楽シーンが盛り上がっていくといいですね。
加藤 そうですね。バンドや映像に限らず、いろんな仲間を持っておくこ
※前編はこちら
加藤マニ
1985年8月14日生。東京都青梅市出身。1995年の夏、自由研究の題材としてコマ撮りアニメーションを選び、ハムスターのイラストを書いた紙を切り抜き、父親の持っていたVHS-Cカセットのビデオレコーダーで1コマずつ撮影したことから映像制作に興味を持つ。2014年、冨田ラボ「この世は不思議 feat. 原 由子、横山剣、椎名林檎、さかいゆう」にて、SPACE SHOWER TV MUSIC VIDEO AWARD 2014 BEST VIDEO受賞。2015年、キュウソネコカミ「ビビった」にて、SPACE SHOWER TV MUSIC VIDEO AWARD 2015 BEST VIDEO受賞。2016年秋、マニフィルムス株式会社として法人化。現在は東京・代田橋の不気味なマンションを本拠に、映像監督 奥藤祥弘、大眉俊二、CGデザイナー 石原大毅らと共にWAHを結成。インディーズ、メジャーを問わずミュージックビデオ等の映像制作、広告デザインやウェブデザインをおこなう。