Official髭男dismがひとつ上の“漢”(オトコ)を目指し、あらゆる分野のエキスパートに会って教養を深めつつダンディ偏差値を爆上げする連載。第3回目は特別編として「音楽専門学校 東京スクールオブミュージック専門学校 渋谷」にお邪魔して、ひとつ上のアーティストになるために照明について勉強してきました! ライヴの雰囲気を左右する大事な仕事だけど、その奥深さがいまひとつ認知されていない照明。メンバーには実際に照明を操作してもらって、その奥深さと楽しさを体験してもらいました。

Dandy 4:ひとつ上のアーティストのための照明講座

本日の講師はコチラ

佐々木治郎さん
1972年6月17日生まれ。93年大手照明会社入社。ツアーコンサート、芝居、イベント照明経験を経て2004年退社。
以後、専門学校講師と多方面の現場をフリーで活動中。

照明は額縁を描く仕事

全員 今日はよろしくお願いいたします!
先生 よろしくお願いします!

−−まずはじめに、照明とはどのようなお仕事なのか教えてください。
先生 本来は太陽の下だとか明かりの下で見えていればいいものを、何もない真っ暗な空間で、曲の雰囲気に合った演出効果を色付けする仕事です。PAは音や声が届かないと意味がないんですけど、照明はアーティストの曲作りの意向を汲んでの演出効果だと思っています。それをまずは捉えるのがすごく重要なんです。演出効果の役割ですので、アーティストさんと密にお話しすることが非常に重要です。
藤原 どういう照明がいいのかは、アーティストさんごとによってかなり違いますか?
先生 そうですね。なのでいろいろなタイプの照明さんがいますし、アーティストさんサイドでも作品によってカラーが変わるので、今回はこういうイメージでいきたいから照明さんを代えたいというのはよくある話ですね。

−−ヒゲダンの皆さんはライヴの照明に関して何か会話はあったりしますか?
藤原 ありますね。ゲネプロの時点から、ここはこうしてほしいといったやり取りはしております。話しをすればするほど、曲の展開で照明が来てほしいときに来てくれた、っていうのはすごくありますね。

−−どこまで細かく話すんですか?
楢崎 まずは照明のプログラムを組んでくれて、それから“ここをこうしたい”と要望を取り入れてもらってます。
藤原 何も言わなくてもバンッ!と点く照明が好きで。こだわりがある部分に関しては、自分たち発信で進めたりしております。あとは照明さんから“ここはどういうイメージ?”という相談を受けて一緒に作っていくパターンもあります。
先生 汲み取ってほしいところを汲み取ってもらえると気持ちがいいですよね。逆に“なぜここをスルーするんだろう?”と、ライヴを観てて思うこともありますが(笑)。

藤原 最終的に映像を見返して初めてわかることのほうが多いですね。明かりがきてほしいところにバンッと当たっているとテンションが上がります。気合いが入っている感じというか、ショウという感じがして。

−−いい照明の条件は何ですか?
先生 フェスの当日オペレーションなど、お客さんよりもその曲のことを知らなかったりするような急なお仕事もあるわけで、そうなるとお客さんのほうが曲のきっかけ(場面)や意味を理解しているので、照明が“え?”と思うような瞬間もあったりします。しかしそこで全体の照明が合致していると、アーティストさん側もやりやすいでしょうし次も呼ばれると思います。

−−学校としてはどの部分から教えるんですか?
先生 まずは機材の種類の説明からですね。形が違うってことは光の出方も違うということなので。柄が出るものもあれば、大きさを変えられるものもあります。色や動きをコンピューターで制御できるLEDもあります。しかしLEDはプログラミングにすごく時間がかかります。
全員 そうなんですか!

▲照明の明るさを調節する装置を調光卓という。マニュアルで操作するもの、コンピューター制御卓、ムービング専用卓など種類もさまざまだ。

先生 どう動いてほしいか、幅や色を決めてプログラミングしなきゃいけないので。
松浦 数値を入れて設定していくんですか?
先生 そうですね。数値を打ち込んでいく細かい作業になります。このタイミングだって時に、動きと色の設定をそれぞれ入力していきます。
藤原 時間をかけようと思ったらいくらでもかけられますね。
先生 なので、時間が無限にあるのがベストですね(笑)。しかしながら現場は時間ありきでタイトなので、限られた時間の中で作っていく必要があります。
楢崎 スモークはやっぱり大事なんですか?
先生 けっこう嫌がられる方も多いですが、スモークは照明にとってすごく重要で、スモークがないとただ色がついて明るくなるだけで、何をやっているのかわからないんですよね。スモークをつけると光の筋(光線)ができるんです。 だから照明って額縁を描く仕事なんですね。正面から観た時の絵の中を作っている仕事なので、なるべく空間を作らない、どういった色で空間を染めていくかを想像していくんです。当然色のセンスは必要とされますが、そこは経験で覚えていけば問題ないと思います。気持ち悪い色味の明かりをあえて出す人もいますね。上品なキレイな明かりばかりだと、意外とライヴって味気なくなっちゃうんです。だからたまに汚い明かりが入ってきたほうが、リセットされて2時間のライヴでも飽きずに観られます。

−−それが演出の一部として無意識のうちに観客に刷り込まれるということですね。
先生 そうですね。色相で言えば紫と緑は反対色なんですね。単体だとキレイなのですが、同時に当たると白くなっちゃうんです。ダークなイメージで色を選んでいても、実は紫と緑をつけすぎると舞台が甘く白い雰囲気になっちゃうんですね。
全員 へぇ~。
先生 そういうときは細い光線にして干渉し合わないようにするなど、考えなきゃいけないんです。
藤原 すごいなぁ。
松浦 僕らの知らないところでそんな複雑なことが起きていたんですね…。

6台稼働させると家庭のブレーカーが飛ぶ

−−ワンマンライヴだと、照明を決めるのにどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか?
先生 リハーサルから立ち会えるときですと、2~3日前から最新のものを観に行って会社に持ち帰ってから構成を考えます。アーティストさんによって曲数もそれぞれですので、一概には言い切れませんね。ライヴハウスですと仕込み(機材)が違うため、自分のセッティングに修正する時間もないので有りモノ(会場にあるもの)でやります。アリーナやドームツアー等になると、常に同じ機材を持ち周っているので、どの会場でも同じセットでプログラミングを再生することができます。これを作るのに丸4日くらいはかかりますが(笑)。
ヒゲダンマネージャー ヒゲダンのメンバーは知らないかもしれないですが、ライヴのタイムテーブルに“シュート”(照明の調整作業)と書かれている時間があります。これが一番長く時間を取っているんですね。照明さんが開場ギリギリまでセッティングを詰めているのを見て、時間がかかるんだなぁと思っておりました。
先生 当たるべきところに照明がきちんと当たっていないといけないので。LEDのような動きを操作できるもの以外は、1台1台手作業で微調整していきます。
藤原 長い棒(介錯棒)を持って照明を微調整しているのをよく見てます。
先生 その通りです。今もさっきまで調整していました。
松浦 学校にはひと通りの機材が揃っているんですか?
先生 はい、一般的なものは揃っております。
小笹 照明にもトレンドとかはあるんですか?
先生 今はLEDですね。電力を食わないのも大きなメリットですし、(大口径の照明を指差して)あのパーライトなんかは1台500ワットくらいなので、6台稼働させると家庭のブレーカーが飛んでしまいます(笑)。それがLEDだと50台は稼働させることができます。
藤原 すごいなぁ!
先生 では実際に見てみましょう。フェーダーを上げれば色が点くというプログラミングを入力している卓と(写真上)、LEDのように動きのないムービング系ライト用の卓です(写真下)。

小笹 フェーダーのほうは触ったことある!
藤原 え、あるの!?
小笹 ライヴハウスで働いていたときに。
先生 曲のこの部分でこうしたいって時は、フェーダーごとにメモリーしていきます。Aメロ、Bメロ、サビなど、それぞれプログラミングして制御していきます。
松浦 プリセットみたいな感じですね。
先生 そうです! 手だけを使って操作するのが物理的に難しいので、曲に合わせてプリセットを組んでいくんです。
藤原 グループフェーダーみたいなものですね。
先生 そういうことですね! 明かりの組み合わせを作ってメモリーして、シーンを作っていきます。ムービング系のライトはWindowsでコンピューター制御します。シーンごとにメモリーしていくんですね。
全員 おぉ!
先生 黄色のボタンは“ゴーボタン”といって、これでどんどんシーンが進んでいきます。押すとブルーが点く、次は赤の点滅が始まる、次は消える、次はまた赤く点くみたいな制御を、ボタンひとつでできてしまうんです。
藤原 すごいな~。
先生 ということは“点き方”“消え方”“入り方”などの時間もプログラミングする必要があるんです。2秒で点く、押してから1秒休んで5秒かけて点くなどといったこともできます。だからすごく時間がかかるんです。
藤原 バンドの演奏が速くなってしまったらどうなるんですか?
先生 それについていけないのがムービング系ライトのシステムですね。要は決まり事なので考え方は同期(ストリングスやブラスなど、その場にいない楽器のサウンドを加えること)と一緒です。
藤原 なるほど。
先生 なので、決め事ではない展開になった時の対応力がモノを言います。いつまでも暗いまま花道を走っていることがないように(笑)。そこでピンスポットという存在が偉大なんです。これがあると不測の事態にも対応できます。最近はあまり聞かないですが、ライヴ中に電源が落ちるといったことが昔はたまにあったんですね。そこで別電源のピンスポットがあれば、さまざまな対応ができるので重宝されていました。
藤原 とりあえず、僕らはライヴで予定外のことをするのはやめよう。
全員 (笑)。

実際に照明を体験してみよう

先生 今日は、すでにプログラミングしてあるプリセットを使って実際に照明をやっていただきましょう。今回は生徒の2人に、こちらで用意したバンドの曲に合わせた照明を作ってもらいました。

▲15年6月に結成された4人組バンドのKlang Rule。シーケンスの完成度の高さにヒゲダンも大絶賛。アルバム『CUBISM』を会場限定でリリース。

先生 とにかく照明では人を見せることが一番大事です。色を描くことも大事ですが、お客さんはアーティストを観に来ているので、アーティストをよく見せるというのは常々生徒に教えていることです。

先生 専用のソフトでプログラミングをしております。同じソフトを自分のパソコンにインストールすれば、自宅でも作業ができるんですね。そこで作ったデータをUSBで卓に読み込ませて再生するといったことも可能です。

−−照明のテクノロジーも目覚ましい進化を遂げているんですね。

先生 そうですね、昔では考えられないような進化を遂げていますね。今は照明データをDropboxに上げて、その続きを別の人が編集することも可能です。
藤原 音楽みたいに編集できるんですね。
先生 そうです。明かりなどの細かな編集が可能です。

−−生徒のおふたりはどうして照明をやろうと思ったんですか?

先生 いい質問ですね(笑)。

大杉さん もともとライヴを観に行くのが好きで、いろんなライヴを観ている中、照明に感動したことをきっかけに、自分と同じように照明で心を動かしてくれる人ができたらと思って選びました。
小笹 1人目から模範解答(笑)。

西山さん ライヴやお芝居を観た時、視覚的にわかる演出が照明だと思うんですね。シーンのきっかけだったり雰囲気だったり、お客さんの気持ちと一番リンクしているのが照明だと思って選びました。
先生 そうですね。同じ曲でも赤で観るのか青で観るのかで、曲の印象って全然違うと思うんですよね。逆に言うと、そこを乗っ取れるというか支配できるのが照明の醍醐味ですね。
楢崎 なぁんでそんなしっかりしてるの~!?
藤原 何のキャラだよ(笑)!
先生 ではバンドの曲に合わせてやってみましょう。生徒が一度お手本を見せますので、どなたかそれぞれの卓の近くで見ていてください。
松浦 じゃあ僕が。
小笹 ムービングライトのほうは僕が。
楢崎 教えを乞うんだから、ちゃんとした態度でいかんと!
松浦&小笹 よろしくお願いいたします(笑)。

(Klang Ruler「B.O.D」を演奏)

全員 おぉ~(拍手)!
小笹 バンドかっこよ!
松浦 めちゃいいね。シーケンス(トラック)は誰が作ってるの!?
田中さん (ボーカルの)僕です。
松浦 やば!
先生 ではお二方いけそうですか?
松浦 はい、感覚で(笑)。

▲生徒さんに教えてもらいつつ松浦と小笹が挑戦。なかなか筋がいい。

松浦 むずい!
小笹 でもすっごい楽しい!
楢崎 サビの“like a fire!”の時がやばかったね!
小笹 でもこれ、世界を支配してる感覚がありますよ!
松浦 あとはバンドがめっちゃカッコ良かったから、照明のしがいがありますよ。
先生 大事なのは譜割りですね。これさえ頭にしっかり入っていれば展開も自由に演出できます。
松浦 ブレイクをばっちり合わせたかったなぁ!
先生 いやいや、2回しか聴いてないのにこれだけ合わせられるのは、やっぱりアーティストですねぇ。
松浦 みんな…やりたいでしょ?
楢崎 僕はやり方を見てたのでもうやれそうです(笑)!
松浦 ちょっと俺、前でバンド観てくる。
楢崎 え、俺の照明も見てよ?
藤原 じゃあ俺がならちゃんを見とくよ(笑)。

▲操作説明をしっかり見ていたせいか割と把握している楢崎。かなり楽しそう。

生徒 初めてなのにすごいです!
楢崎 チョーー楽しい!
先生 生徒も見習ってほしいですね(笑)。
楢崎 マジで支配してる!

『Official髭男dismのRoad to Dandy 』バックナンバー

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■Official髭男dism

オフィシャル ヒゲ ダンディズム / 12年結成。メンバーは、藤原聡(Vo,Pf)、小笹大輔(Gt)、松浦匡希(Dr)、楢崎誠(Ba)。15年、ミニアルバム『ラブとピースは君の中』でデビュー。

■東京スクールオブミュージック専門学校 渋谷でライブを開催!
3/31(土)に行われるオープンキャンパスの一環としてOfficial髭男dismがライヴを開催。詳細は東京スクールオブミュージックのサイトにてチェック!

■NEW ALBUM『エスカパレード』

【通常盤(CDのみ)】¥2,800+税
【初回限定盤(CD+DVD)】¥3,500+税
LASTRUM
2018年4月11日リリース

■TOUR SCHEDULE
5/3(木)仙台darwin
5/12(土)熊本B.9 V2
5/13(日)福岡DRUM Be-1
5/25(金)広島BLUE LIVE HIROSHIMA
5/26(土)大阪サンケイホールプリーゼ
6/2(土)水戸ライトハウス
6/9(土)名古屋ダイヤモンドホール
6/16(土)岡山IMAGE
6/17(日)米子laughs
6/24(日)柏PALOOZA
6/29(金)金沢vanvan V4
7/5(木)中野サンプラザ