歌詞を書いて「ありがとう」なんて言われるなんて。 言葉なんて誰でも扱えるのに。 特殊な能力や技術じゃないからこそ。 だからこそプライド持ってやってるのかな。 なんて思います。 これは歌詞の説明ではありません。 これは歌詞の解説ではありません。 今までの歌詞はあれ以上でも以下でもありません。 ここにあるのは自分で書いた歌詞の行間と字余り。
『三月のマーチ』
マーチ
【名】
行進曲、歩速を揃えて行進をするために演奏される楽曲、ないし、行進を描写した楽曲
夏よりも冬が好きだ。
もっとわがままに言わせてもらうと、冬の始まりと冬の終わりが好きだ。
寒すぎるのはいくらなんでも厳しい。
冬の始まりはいい匂いがする。
誰もが秋に抱くようなあの景色を通り抜け、その景色を冷却していく冬の匂いだ。
冬の終わりはすべて洗い流したような澄んだ匂いがする。
一年というサイクルの中ここで一度リセットし、ある者には希望の春か、またある者には絶望の春に向かう。
そんな匂いだ。
結露は部屋の暖かさの印。
誰かのため息が白い息となり霜となり田んぼと通学路に化粧をした。
もうキスぐらいは済ませて、夜の道を歩く僕はこの街の青春をすべて背負い込んでいる。
そんな錯覚をするのもまた青春に浸かっているということなのだろう。
冷たい空気が水色の月をよりくっきりと目に映し、その澄んだ空気は僕のあの人への心みたいだ。
なんて。
寒さのせいか、違う理由か。
耳が赤くなった。
冬君は春さんとお隣さんだ。
向こう隣には秋ちゃんがいる。
真向かいの夏さんとはまだお会いしたことがないらしい。
それぞれはそれぞれの時間の中だけでしか過ごせない。
四人には均等に時間があるのかというと、最近はそうでもない。
このところ冬君の時間は短い。
「もう帰る時間だ」
と寂しげに言う冬君。
そんな冬君に言う。
「アリガトウ サヨナラ」
バトンは春ちゃんに託された。
街の景色は色づき始める。
あの子のスカートをめくる春一番の風。
冬君はひまわりを見たことがない。
でも冬のツンとしたキラメキを教えてくれたのは君だ。
行進するように何度も何度も僕の前を季節が通り抜けた。
どんな季節もまた巡ってくることを僕に約束してくれた。
巡ってきてくれた時に僕がそこにいれるように頑張って生きた。
夏の僕の頑張りを冬君は知らない。
冬の僕の頑張りを夏さんは知らない。
肩寄せ合う季節。
耐え忍ぶ季節。
どう呼ばれても構わない。
僕はそんな冬が好きだ。
あの鳥が飛ばないのは温めるものがあるから。
種が重い土に耐えるのは出したい芽があるから。
そうなると。
僕がこの胸にしまい込んで取り出すには少々時間がかかるような。
まだカサブタにもなっていない気持ちは春物の服と一緒に取り出してしまおう。
ただ僕は春を待つ。
鳥と種と僕。
ただ信じて待つ。
すべての季節に思い出がある。
すべての思い出には君がいる。
すべての季節を君と過ごした。
あのサンダルもあのマフラーも君と選んだ。
卒業式も入学式もあめでとうを君と言い合った。
それとは違う年、僕は優しい春に優しい君から卒業した。
また会えるでしょう。
一年をリセットしてくれる三月。
リセットして欲しいことなんてありあまるけど、それは心持ちだけの話になりそうだ。
でもそれで充分じゃないか。
君とはあれから会っていない。
でもまた会えるよね。
嫌なことばかりだけど、この世の中にも素敵なことは少なからずある。
それを教えてくれたのは君だ。
三月には思いがありすぎる。
三月の曲が多いのはそのためか。
無意識の中の意識に僕はペンを動かされている。
これは初めて僕らが三月を歌った歌。
濡れた窓 雪に似た雨 白い息地面に積もって
草やアスファルトに化粧をし君のキス 水色の月
冷たい空気が心や視界まで澄ましていったもう帰る時間だと冬は寂しげに
そんな冬に言うよアリガトウサヨナラ
預かっていたバトンを春に渡すまた会えるでしょう 君と僕も
冬のキラメキを教えてくれたのは君だ
どんな季節もまた巡ってくる事を僕に約束してくれた鳥が飛ばないのは温めるものがあるから
種が耐えるのは出したい芽があるから
僕がこの気持ち抱え込んでいるのはただ春を信じ待っていたからまた会えるでしょう 君と僕も
春のやさしさを教えてくれたのは君だ
また会えるでしょう 君と僕も
世の素敵さ教えてくれたのは君だ
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[第2夜 #1]『大山さん』Guest: タナカヒロキ (LEGO BIG MORL)
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