長らく音楽を続けているといろいろあります。
解散したり、新しくユニットを作ったりと想定外の連続です。

中には「国民的アニメの劇場版のレビューを書け」という案件を頂くことがあるみたいです。

『名探偵コナンゼロの執行人』の巻

5月21日。新宿に降り立ち、歌舞伎町を目指します。
赤門をくぐり、溢れかえる大陸系の人々をかき分けて進みます。

ガールズバーの誘惑にも負けず、ゴジラを乗っけた建物へ到着。
時刻は平日の19時前でした。そんな時間に子供向け原作の映画を観るのはしびれますね

正直、「こりゃソロ上映会になるんじゃ」とビビっておりました。
大スクリーン独り占めなら一緒に

「らぁぁぁぁん!!!」や「いっけぇぇぇぇ!!!」と吠えようかなぁと企んでおりました。
それがフタを開けてみるとなんと、人間わんさか。

しかも20-30代の女性が中心。
ていうか子供が一人もいないんです。すごくないですか?

アニメを楽しむ人の高齢化が進んだとは言え、ゼロは衝撃でした。ゼロの執行人だけに。はい。
とりあえず身体に悪そうなアイテムを購入。これが無いと映画は始まらない。

映画館に入り、ボーッとしていると、明かりが暗くなりだします。
オープニングから衝撃です。なんと阿笠博士の作ったドローンが飛び回ります。

驚くのがその性能です。

「30kmの飛行範囲が可能じゃ」みたいなことを平気で言い出します(市販品のメーカーデータでも2~3kmなんかが基本)。

元々、僕は阿笠博士のことを「大リーガー級のマッドサイエンティスト」と思っておりました。
今作はそのスキルがフルに発揮されそうでワクワクしてきます。

とにかく、いきなり航空法に抵触しながら『ゼロの執行人』スタート。

結論から言うと今作の内容は「匿名通信システムを使ったサイバーテロ」です。

「IoTテロリスト VS マッドサイエンティスト」という図式のもと、テクノロジーがぶつかり合います。
犯人はもうとにかくハッキングしまくり。

遠隔操作で都内中の電化製品をバッカンバッカン爆破します。超怖い。
正直トリックもクソも無い展開なんですが、とにかく怖い。

だって想像してみてください。今この記事を読んでいるスマホが、いきなり爆発するんですよ。
気弱いやつならトラウマ必至です。指とか吹き飛ぶんじゃないかしら。たぶん。

だけどいくら技術が進化したからとは言え、ちょっと思いました。

「こんなことって本当にできるんかしら?」と。
ラストシーンに至っては、映像を立体化したリアルタイム転送技術まで出てきます。
もう思っちゃいました。「これってできなくね?」と。

「時代考証がムチャクチャだ」と。「『コナン』らしくない」と。
だって「ファンタジーだけど、リアリティもしっかり!」だからこそ『コナン』は面白いんじゃないですか。

後半、なんとすべての謎が明らかになりました。
とんでもないシーンが映ります。

コナンがスマホを見せるシーンなんですが、その画面には「5G」と書かれていたのです。
ご存知のように現在、日本での主流は第四世代のシステム、いわゆる「4G」です。

「5G」は2020年の実用化を目指している技術です。
今後はIoT化が急速に進み、身の回りのありとあらゆるモノがネットに繋がります。

するとトラフィック(通信回線を利用するデータ量)が激増します。
各種家電にウェアラブルデバイス。自動運転カーに産業用ドローンに遠隔手術。

これらの機器がワイヤレスで通信されることは間違いなく、そのときに本命視されているのが「5G」による通信網です。
いやはや、出だしからコンテンツがリッチすぎる映画だとは思っていたのです。

そう、おそらく『ゼロの執行人』の舞台は2020年の東京。

「東京でサミットが行われる」という設定も、来たるオリンピックへのオマージュなのでしょう。
そしてこれからの社会への警鐘です。
その中で「お国のため」という哲学を曲げない、安室透の仕事っぷりを堪能するという名作でした。

これからネットはさらに発達し、「国境」というものがだんだん曖昧になってきます。
現在、僕たちはマップ機能やAmazon、Yahoo!にiPhoneを必需品として生きています。
逆に言えばこれらが使える場所なら、世界中どこに行っても、わりとやっていけるようになりました。
「世界のどの都市にいても生活基準が変わらない」というのはじつはすごいことです。

そして注目すべきは、「それらを開発したのは他国の民間サービス」だという事実です。
規制のせいもありますが、国の供給するシステムは基本、使い勝手が悪いです(e-taxとかマイナンバーとか)。
分かりやすく言うと「国が暮らしを豊かにする政策を考えてるらしい」と言われるよりも

「googleがおもしれーこと無料で提供するらしいぜ」の方が真実味ありませんか?
司法、刑法なんかは別としても、国家に依存しないといけない時代が終わりつつあります。

ネットやスマホのおかげで、僕たちはどんどん自由になってきています。
「国家を大事にしないなんて軟弱だ!」という人もいると思います。
しかし「国のためにがんばる!」というストーリーに無理が生じてきているのが時勢です。
むかし我が国には「藩」という境目がありましたが、それも明治4年に廃止されました。
それと同じく、どんどん「国家」という境目が重要視されなくなるはずです。

そんな2020年の向こう側で「日本国が恋人」を貫く安室透はまるで、

ラストサムライのようでした。

文・平井拓郎(Tobari/exQOOLAND)

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