Official髭男dismがひとつ上の“漢”(オトコ)を目指し、あらゆる分野のエキスパートに会って教養を深めつつダンディ偏差値を爆上げする連載。第4回目は「音楽専門学校 東京スクールオブミュージック専門学校 渋谷」にお邪魔して、ひとつ上のアーティストになるためのDTM講座について学んできたぞ! かなりマニアックな内容ですが、ミュージシャンにとってDTMは切っても切れない存在。メンバーが抱えるDTMの悩みとは…!? 最後はDTMの考え方を覆す(?)話へと発展。その前編をお届けします!

Dandy 5:ひとつ上のアーティストのためのDTM講座《前編》

本日の講師はコチラ

藤井丈司さん
サザンオールスターズや布袋寅泰、JUDY AND MARY、ウルフルズ等の作品にプロデューサーとして携わりミリオンヒットを連発。最近ではBRADIO等を手掛けている音楽プロデューサー。

DTMを例えるなら狭くて階数が高いビル

――読者にはDTMが何かわからない方もいると思うので、ずばりDTMとは何でしょうか?
先生 コンピューターで音楽を作ることかな?
藤原 デジタルトラックミュージック…何だっけ?
小笹 デスクトップミュージック。
藤原 全然違った(笑)!
先生 皆さんはもちろんプロだから理解しているけど、最近では音楽をコンピューターで作ることが多いんです。タブレットでもスマホでも多少はできるんだけど、基本的な作業はパソコンがメイン。80年代の終わりからDTMが出始めて、スタジオでギターを弾いていたものがコンピューターでも制作できるようになったと。

――藤井先生はまさにその過渡期を経験しているわけですね。
先生 そうですね。サザンオールスターズとか布袋寅泰さんの『GUITARHYTHM』(88年)とか、ちょうどコンピューターでロックをやろうよねってところの始まりだったんです。僕のキャリアもそこから始まっているし、日本のDTMもその頃から始まりました。

――DTMの進化の過程も見てきて。
先生 見てきて、だんだんついていけなくなるという(笑)。
藤原 学校ではどこまで教えるんですか?
先生 僕は作曲/編曲を教えることが多いですけど、その中でいわゆるDTMやDAW(デジタルオーディオワークステーション。DTMソフトのこと)をどう使うかを教えていきます。苦手な人は最初の1年くらいで嫌になっちゃうんだよね(笑)。難しいから。皆さんソフトは何を使ってるんですか?
松浦 全員Logic Proを持ってる感じです。
先生 Logicだけ?
藤原 僕はAbleton Liveを使い始めました。3日前くらいから(笑)。
先生 基本みんなLogicでやってるの?
松浦 はい。
先生 みんなでファイルを共有したり?
松浦 共有してプリプロデータを送り合うみたいな。僕はドラムなのでライヴのときに同期を流しているんですけど、それもLogicで流してます。
先生 叩きながら“次の曲は…”って出すわけだ。
松浦 そうですね。
先生 うわ~大変だね。

松浦 もうちょっと上手くやればまとめられるんですけど、僕はそこまでLogicに関して勉強していなくて。本当はポンッて次の曲にすぐに飛べる機能もあるらしいんですけど、全然調べてません(笑)。マークしたリージョン(DAWのプロジェクト内に表示されるデータ)に飛べる機能を使ったらいいじゃんって言われたことがあるんですけど、今まで曲間で止めて曲アタマに合わせてまた流す…ってことをずっとやっていたので、逆にそれに慣れちゃって(笑)。
楢崎 DTMというか…。
先生 ライヴでの使い方だよね。でもそれは大事だよ。以前はシンセサイザーとかDAWのプログラミングのほうが重要視されていたけど、ここ10年くらいで“ライヴでどう使うか”のほうが進化してきている印象がありますね。藤原くんは何でLogicから始めたの?
藤原 何も考えずに“音楽をやる人はMacのパソコンを使うんだ”と思ってMacを買って、それで自然にという感じですね。
先生 そういう人は多いよね。もともとはMacに付属したソフトじゃなかったんだけど、02年にApple社がLogicのEmagic社を買収して、ガレバン(GarageBand)からアップデートするとLogic Proになるっていう。そうやってLogicを買う人が増えたんだけど、簡単そうに見えて難しいというか。ビルで言うと狭くて階数が高いビルっていうのかな。タテに深いんだよね。目的の場所に行くためには、何階まで行かないとダメっていうのがけっこうあって。階層が深いと言うんだけど、それがわりと大変。

Official髭男dism流のDTM活用法

先生 みんなはLogicをメモみたいに使うの? それともわりとちゃんと作る?
松浦 さとちゃん(藤原)はけっこうちゃんと作ってるよね? いろいろとソフトを入れたり。
藤原 そうですね。最近はちょっとずつデモのクオリティを上げています。
松浦 明らかに上がってるもんね(笑)。
藤原 曲によってはドラムはレコーディングせずに打ち込みのデータをLogicで作って、それをエンジニアさんに持って行くというケースも最近は増えてきました。
先生 Logicはドラムのトラックがすごくいいじゃないですか。
松浦 いい感じでビートを鳴らしてくれますよね。
先生 そうなんです。フィルも自動的に入ってるから。
藤原 ドラマーとかも選べますもんね。
松浦 楢ちゃんがそれを編集してわかりやすくして。Logicが曲を作る上でもっとも簡単な気がする。

――ちなみに楢ちゃんはどんな使い方を?
楢崎 僕はプロジェクトから初めて、Drummer(ドラムパターンを作れる標準搭載ソフト)を起動させて叩いてもらいながら、ベースはインターフェイスにつなげて、ボーカルマイクでアコースティックギターを録る感じですね。打ち込むことがあまりできないから全部録る、みたいな(笑)。
先生 そういうのもアリなんだよ。オーディオのメモ機能みたいにして、どんどん歌ったりして編集していくみたいな。
楢崎 あとはデモ作って送ってもらって、ベースラインのバランスを考えることくらいしかできないです。

先生 最初は誰が曲を作るの?
藤原 僕が作るんですけど、プリプロを作る時とデモを作る時とデモの卵を作る時の3パターンがあって、iPhoneのボイスメモに弾き語りとか鼻歌みたいなメモをけっこうストックしてるんです。
先生 僕もまったく同じ。
藤原 ほんとですか!? “こういう曲が欲しいな”って時に、ストックにある曲をAirDropで飛ばして、そのデータをLogicの中にダン!ってぶち込みます。それを聴きながら、似通ったBPMにプロジェクトを設定して、デモを作っていくっていうやり方です。
先生 すごいスマートですね。
藤原 AirDropでシュポ!っていった瞬間に“あ、俺使いこなしてるな”って(笑)。
全員 はははは(笑)。
藤原 小慣れた感が出てきて最近楽しいんです(笑)。で、デモをワンコーラスまで作って、それをバウンスしてみんなのところに持って行って、会議で“この曲をやろう”となった曲をフル尺にしていく感じです。それでプロジェクトをメンバーのみんなに送って、差し替えてもらうというやり方を採用しています。

――それで、それぞれが作ったものをドッキングするんですね?
藤原 それもあるし、最近は自分たちの音だけじゃなくて、ストリングスやブラスを重ねる曲も増えてきたので、そのデータを作っておけば、パソコンをスタジオに持って行ってちゃん松がクリックを聴きながらシーケンサーみたいに操作して、スタジオでみんなのプレイを詰めるってこともこのLogicがあるおかげでできています。

――大輔くんは?
小笹 僕も送ってもらったデモのトラックを1つ1つ聴くんですけど、“みんなはここでこう動いてるんだな”っていうのが見やすいんです。スタジオでいっせーのせ!で聴くと、他の楽器の細かい部分が聴き取れなかったりして。それで自分のフレーズを作ったりすることが多いですね。

藤原 あと僕はアコギのフレージングがそんなに弾けないので、MIDIで打ち込んだデータを送って、それをギターに昇華することを最近はやってもらっています。
小笹 ピアノの人に打ち込んでもらったギター…ギターで弾くことをまったく考えずに作ってもらった音の並びを、ギターで弾き直すとけっこう面白い。
楢崎 面白いよね。
藤原 ボイシングの積み方も全然変わってくるからね。
小笹 ギターだけで弾くとコードの積み方もけっこう限られてくるんですけど、それをピアノで作ってもらってギターで変換するのがすごくやりやすくて面白いなって思います。
先生 なるほど、それは面白い。

DTMは生のコミュニケーションも大事

藤原 この間、ライブでカバーをやろうということになりまして、ベースの楢ちゃんはサックスも吹くのでサックスの耳コピを至急しなきゃいけないと。楽譜があればラクなのにってことで、初めてスコア機能を使いました。耳コピしたフレーズをスコアモードでMIDIで打ち込んで、ウインドウを印刷するっていうのを初めてやりました。
楢崎 彼には絶対音感があるから、MIDIでバーっと実音を打ってもらって、度数を変えてアルトサックスにしてもらって。
藤原 キレイな楽譜を出すのはちょっと難しかったです。
楢崎 ね(笑)。
先生 スコアならCubaseのほうがいいかな。普通に使えるよ。
藤原 Sibeliusを買ってみましたが、まだ使ってなくて。
先生 Sibeliusはちゃんとしたオーケストラの譜面を書くためのソフトだから、パパッと書くには大変。Clover Chord Systemsとかはけっこういいんだよね。5,000円くらいなんだけど。
藤原 (調べて)あ、良さそうですね。あと1週間早く伺いたかった(笑)。
全員 ははは(笑)。
先生 でもブラスの移調は簡単にできるソフトじゃないよ。コードをパッと書いたりメロディーを書いたりするのに便利。
藤原 それが5,000円でできちゃうなら買いです。譜面を作るのにだいぶ時間がかかっちゃうから。
先生 譜面って大変だよね。
藤原 大変ですよね。レコーディングだと準備しないといけないじゃないですか。エンジニアさんがツールス(Pro Tools)にマーカーを付けたりもするし。

先生 口(口頭)でいいよ。
4人 (笑)。
先生 ブラスが本当に上手い人たちは口で言えばすぐに採譜できるから。
4人 へぇ!
先生 やってもらって“もうちょっとこうしてくれませんか?”って言うと考えてくれるから。下手に譜面を書いていくと、“これを演奏しなきゃいけない”って思っちゃうじゃん? だから、大体のブラスのメンバーは口で説明すればすぐに採譜できるし、それをブラスアレンジするプロも多いからそういうやり方もいいですよ。
藤原 ご紹介いただけたりとか…?
全員 (笑)。
先生 そういう作業が一番上手いと思うのが、サザンオールスターズもやってる山本拓夫さん。曲の大体の構成を考えたら、“じゃあやるよ”ってパパッてその場で譜面を書いちゃう。でもそういうほうが音楽っぽいじゃないですか?
藤原 本当にそうですね。あと、作業時間がめちゃくちゃかかるので、わりと非効率だなって思っちゃうんです。僕にとっては死活問題というか、睡眠時間を確保する上でもすごく大事なので。
先生 ちゃんと寝たり風呂に入ったりご飯を食べたりするほうが、いい音楽が生まれるからね。
藤原 本当にそうですよね。

松浦 これ、DTMよりも生のほうがいいって話だよね(笑)? ブラスに関しては。
藤原 いやぁ、でもこれは真理だと思う。身をもって体感した。
先生 ストリングスも同じというか。もちろん考えないとダメよ? 考えた上で聴かせながら、あとは口で伝えるのが一番いいと思う。
藤原 次回の制作からそういうやり方にシフトしようと思います!

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■Official髭男dism

オフィシャル ヒゲ ダンディズム / 12年結成。メンバーは、藤原聡(Vo,Pf)、小笹大輔(Gt)、松浦匡希(Dr)、楢崎誠(Ba)。15年、ミニアルバム『ラブとピースは君の中』でデビュー。

■東京スクールオブミュージック専門学校 渋谷でライブを開催!
3/31(土)に行われるオープンキャンパスの一環としてOfficial髭男dismがライヴを開催。詳細は東京スクールオブミュージックのサイトにてチェック!

■NEW ALBUM『エスカパレード』

【通常盤(CDのみ)】¥2,800+税
【初回限定盤(CD+DVD)】¥3,500+税
LASTRUM
2018年4月11日リリース

■TOUR SCHEDULE
5/3(木)仙台darwin
5/12(土)熊本B.9 V2
5/13(日)福岡DRUM Be-1
5/25(金)広島BLUE LIVE HIROSHIMA
5/26(土)大阪サンケイホールプリーゼ
6/2(土)水戸ライトハウス
6/9(土)名古屋ダイヤモンドホール
6/16(土)岡山IMAGE
6/17(日)米子laughs
6/24(日)柏PALOOZA
6/29(金)金沢vanvan V4
7/5(木)中野サンプラザ